古くからの伝統衣装![]() この「ズボン」のようなものを「チョンカベーン(โจงกระเบน)・スタイル」といいます。 おそらく、数百年前(アユタヤ朝の時代)から、王宮内などで、使用されていた服装にちがいありません。 「パカーマー」を、行動的に、また、時には、上品に使いこなしたのが、このスタイルなのです。 以下、タイの昔からの衣装で、現代でも、使われているものを、取り上げて見たいと思います。 |
「 パーカーマー 」 正確には、「 パー・カーオ・マー( ผ้าขาวม้า )」と書きますが、 通常は、「パーカーマー」と呼ばれています。 直訳すれば、「馬の白布」という意味ですが、「馬」との関連がどんなものかは、わからないようです。「白布」ということは、昔は、現在のようには、染められてはいなかったもののようです。 以前から、ずっと気になっていたことですが、日本の「袴(ハカマ)」とは、語源を同じくする名前であるような気がしております。日本の古代には、「ハ」の音は、「パ」または「プァ」と発音していたらしいですから。 タイ系民俗は、もともとは、中華文明の影響を受け、ズボンまたは半ズボンのようなものを身につけていたらしいのですが、モン・クメール系の先住民族の土地に移住してくると、広く東南アジア一帯で着用されている「パ・カー・マー」を、「普段着」として使用するようになったようです。 「タイ民俗本来の服装」は、「パカーマー」以外にはないなどともいわれているようですが、実は、モン族の民族衣装だったようで、さらにさかのぼれば、「パーカーマー」は、南インド伝来のものだった可能性が大きいようです。 現在も市場などに出回っている「パーカーマー」は、0.8m×2mほどの、チェック模様に染められた、薄手の粗綿布です。1枚が、100バーツ前後で売られています。 ![]() 腰巻として使われるだけでなく、 「チョンカベーン」としてショート・パンツに、 腰に巻けばベルトに、頭に巻けば、帽子やヘルメット代わりに、そのほか、肩掛け、風呂敷、タオル、毛氈と、限りがないほどの多目的に使えるものです。 現在でも、北タイの男性であれば、1,2枚は、必ずもっているものですが、用途としては、腰に「帯」のように巻いているくらいで、それ以外はお目にかかることもなくなり、もっぱら、水浴時の「バス・ローブ」代わりに使われるくらいです。 |
「 シン (ซิ่น)」 「パーシン(ผ้าซิ่น)」、または、「パーヌン(ผ้านุ่ง)」といいます。 東南アジア一帯で「サローン」と呼ばれているものと同じ形式のものです。 こちらは、女性専用で、「パカマー」とほぼ同じ大きさの布の端を、縫い合わせて筒状にしてあるので、日本人などからは、「筒スカート」ととも呼ばれているようです。 サイズは、胴まわり、約1.5m、丈が1mくらいのようです。 庶民が日常着用する「シン」は、インド風の細かいプリント染色がされている綿布ですが、かつては、綿や麻から紡いで、手織りされたもので、「機織」の出来ない女性は一人前とみなされなかったそうです。 数十年前までのことですが、今でも、物置の隅などに、往時の「綿くり」や「機織」の道具が保管されている家庭もあるようです。 「シン」にも、民族ごとに異なる模様があって、その出自がわかるようになっているらしいのですが、最近は、市販のものを購入することが多く、たまに、祭りの際などに、昔からの伝統模様の「シン」を目にすることがあるくらいのものです。 現在でも、祭などで使用される「シン」は、大変きれいなシルク製ですが、かつては、王侯貴族などの特権階級だけが、身に着けることができた中国伝来の織物だったようです。 「パカーマー」にしても、「シン」にしても、「着替え」をするときに使われ、「魚とり」などに出かけるとの「必需品」です。物陰に隠れて着替えをしなくても、人前で着替えができる、大変重宝なものです。 |
「ミャンマー人」 の 「 ロンジー」 「シン」と同じ形式のものを、東南アジア一帯では、「ロンジー」または、「サローン」と呼んでいるようです。 男女を問わず着用されているようです。 「ミャンマー」では、現在も、普段着としてばかりではなく、正装としても使われていて、どこにでも「ロンジー」姿で出かけることが出来るようです。 学生やお役人など、「ロンジー」の着用が、法律によって定められていて、普段、ジーンズ愛用の若者も、役所に用事があるときなど、公の場所に出かけるときには、「ロンジー」に履きかえることもあるのだそうです。 「ロンジー」を着用するときには、下着は身に着けないため、暑い気候の土地にあっても、大変快適な衣類ということができます。 「ミャンマー」では、男性用の「ロンジー」を「パソー」、女性用を「タメイン」と呼んでいるそうです。 男性の場合は、両側にあまった布を腹の前で大きなこぶを作るように巻き、ほどけないように挟み込みます。このとき、こぶの部分に、うまいことポケットをこしらえて、財布代わりに利用することもあるようです。 女性の場合は、「シン」と同じで、というよりかは、「シン」そのものなのですが、あまった布を片側に寄せ、それをからだにぴったりと巻きつけて、挟み込んでとめます。簡単にとめてあるだけですので、緩んでくるが多く、絞めなおすことになりますが、人前でも構わず、占めなおす姿におめにかかることもあります。 男ものの方が、ややサイズは大きく、丈が1.2mくらい、胴まわりが、2mほどで、「パカマー」よりは、厚手の生地が使用されているのが普通です。 男ものの「ロンジー」の柄は、灰色系、または、えんじ色のチェック柄が多く、この模様は、「身分」と関係しているのだそうで、「高貴な人」が身につける色柄というのがあるのだそうです。 国境の町、「メサイ」へいくと、「ロンジー」姿の男性によく出会いますが、女性の「ロンジー」姿は、「シン」と同じで、珍しくはなく、すぐには、国境の向うからの人とは見分けがつきませんが、男性の場合は、すぐに、「ビルマ人」だとわかります。 頭に「ビルマ風」のターバンを巻くのは、公式なときだけなのか、目にすることは、まずありません。 |
「 チョンカベーン」
![]() ただ、いなかで、この姿に初めて出会ったときには、パンツの上に「褌(ふんどし)」 をしめているようで異様に感じたものでした。 「チョンカベーン」は、もとは、南インドから「クメール」に入ってきた支配階級の衣装だそうですが、 アユタヤ朝のころから、正装として利用されるようになったらしいです。当時から兵士の「軍服」としても、「パカーマー」とともに、使用されていたようです。 |
「 チョンカベーン」の着付け方法
![]() 布をこしからまわして、 左右の長さをそろえる。 |
![]() おなかの前の 布の上端をつまみ出して |
![]() きっちりと 結び合わせる。 |
![]() 余った布を蛇腹式に 2,3回折りたたんだあと |
![]() 棒状に 丸めていく |
![]() 丸めた布を またの下をくぐらせて |
![]() うしろにもって行き、 背中にはさむ。 |
![]() これで出来上がり |
![]() 後ろ姿 |
「ランナー・タイの伝統衣装」も、ご覧ください。
こちら で、ご覧ください。