タイ人の英会話 (タイグリッシュ)


 はじめて、北タイの片田舎、メカム町に来たときのこと、村には、自称 「英会話」 のできる人が、何人かおりました。小生、地元の 「北タイ語」 はおろか、タイの標準語すらカタコトだったのを気遣ってくれたのか、何人かが、“ Can you speak English? ”と、問いかけてきました。英会話は、全くダメというわけではないので、その都度、恐る恐る “ Yes ”と、答えました。その後がたいへん。彼らの「英語」が全く聞き取れないのです。

 結局、村での評判は、「クン・ススキ(鈴木さん)は、タイ語も英語もダメ」ということになってしまいました。それ以来、こちらも「英会話?、全くできません」と答えて、鳥肌が立ちそうなタイ人の「英会話」を回避するようにしました。

 ところが、我が家の子供たちが、授業で「英語」を学習するようになり、タイ人の英語から、逃げてばかりはいられなくなった今日この頃です。
 教師が教える英語も、まさにタイ人の英語、「タイグリッシュ」なのです。驚いたことに、“ H ”のことを、“ヘス”と教えているらしいです。

 最近になって、聞き取れなかった理由が、だんだんとわかってきたのですが、日本人のカタカナ英語と同じで、彼らの英語は、いったんタイ文字に置き換えて発音しているのです。当然、タイ語にない音は、タイ語にある近い音に置き換えるか、省略してしまうわけです。さらには、いったんタイ文字に置き換えるわけですから、タイ語の「声調」が、当てはめられ、アクセントも尻上りで、タイ語調になってしまいます。
 ヒアリング に 困難をきたす理由としては、 この「声調」によることの方が大きいかもしれません。

 以下、いくつかの特徴を、あげてみました。

1. 「黙音になる語尾子音
 英単語の語尾で、タイ語にはない語尾子音の場合は、語尾子音が発音されない。 この場合は、大抵、タイ文字に置き換えるとき、「黙音符合」を付けることになっているようです。 日本語には、語尾が子音で終る単語はないので、逆に省略されないで、おまけの母音がついてしまいますが・・・。

     apartment → apartomen    (アパートン)、 (アパートメント)
     donut → donu(t)    (ドーッ)、 (ドーナツ)
     keyboard → keybo    (キイボー)、 (キイボード)

2. 「語尾の “ L ” の音が、“ N ” の音に変わる。」
 やはり、タイ語に置き換えたとき “ L ” は、  の字があてられ、語頭では、“ L ” 音なのですが、語尾の場合は、「黙音」 または、“ N ” 音に変わってしまいます。それが英語をタイ語に変換する規則なのですから、仕方のないことなんですが。

     apple → appun    (アップン)、 (アップル)
     football → footobon    (フットボン)、 (フットボール)
     hotel → hoten    (ホテン)、 (ホテル)
     mail → mai    (メー)、 (メール)

3. 語尾に “ S ” 音が来た場合も、同様で、“ T ” の音の文字で書かれ、発音されないか、“ T ” の音に変わってしまいます。

     fax → fek (フェック)、 (ファックス)
     gas → gat (ガーッ)、 (ガス)
     house → hau (ハウ)、 (ハウス)

4. タイ語にない2重子音には、2重子音のどちらかが省略されたり、あいだに “ a ” などの母音が付加される。 ( 日本語の場合は、 “ u ” 音 になることが多いようですが )

     film → fim  (フィーム)、 (フィルム)
     icecream → isakeam  (アイサキーム)、 (アイスクリーム)
     skii → sakii  (サキー)、 (スキー)
     sprinkler → spinkar (サピンカー)、 (スプリンクラー)
     switch → sawi(t) (サウィッ)、 (スイッチ)

4. その他、英語をタイ語に置き換えるルールがさだめられていて、発音が変わってしまうものや、発音しにくいのでお尻のほうを省略してしまったり、もともとの呼び名が異なるなどの単語。

     bariquant → batarian (バタリアン)、 (バリカン)
     golf → korf (コーフ)、 (ゴルフ)
     shampoo → sempuu (センプー)、 (シャンプー)
     strawberry → sato (サトー)、 (ストローベリー:苺)

 思いつくままに、タイ人の英語について、書きましたが、日本語にくらべると、タイ語は母音の種類も多く、子音終わりの単語もあり、総じて 「 Native speeker 」 の発音により近いようではあります。
 また、タイのマスコミやタイ人の日常会話の中には、日本のカタカナ言葉ほどには、英語は入っていないようにも思われます。今でも、「トーラタット(遠隔風景・・・テレビのこと)」、「コン・タイ・ループ(写真箱)」などといっているくらいですから。
 書き換えルールの見直しをすれば、よりいっそう英語らしくなるのにと、余計なこと考えたりもしています。
(追記)
 最近、「書き換えルール」が、いくらか改善されたようです。
以下の拙ページなどを、ご参照ください。    (2006-07-29 一部更新)

参考
 「英語のタイ文字置き換えルール」 詳細は、こちら の拙ページへ。
 原典 (タイ国学士院HP:タイ語) は、こちら のページへ。
 MicrosoftWord文書 のダウンロードは、こちら から。

追記
 最近の新聞報道によりますと、TOEFLの平均点でタイが東南アジアでも、最低に近いできで、「教育相」は、教師の質を向上させるとともに、、従来の「暗記・文法中心」のカリキュラムを、「会話・読解・作文」 をより重要視した教育内容に改善するよう、部下に指示をしたそうです。 (2005-08-10)