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メカム川精霊祭り・2007
- スープ・チャター・メー・ナム・カム -




 今回は、ちょっと趣向を変えて、撮影した写真を時系列で、編集しないまま並べてみました。
わかり難いところや冗長なところがあるかとは思いますが、ご容赦ください。
写真の部分をクリックすると、ほぼ2倍のサイズの写真をご覧いただけます。
 背景の村人たちのようすなどから、いまどきの北タイの田舎の習俗などご覧ください。

 この「メカム川の精霊供養の祀り」が、このような形で行われるようになって、まだ、10年にはなりません。
 それまでは、この川から恩恵を受けている農民が、「生贄(いけにえ)」の鶏を持ちよって、簡単な供養をしていただけですが、この数年来、村民あげてのにぎやかな「お祭り」になりました。

 この行事で行われることを簡単にご説明いたしますと、

・ 祭りの準備
 自治区(テサバーン・タンボン)を中心にした実行委員会(?)の有志たちは、祭りの数日前から、会場の設営など大忙しです。
 何しろ、郡役所(アンプー)はおろか、代議士や県のお役人なども参加するため、手抜かりは許されません。おそらく、この祭りにかかる費用の一部も、国から補助があるものと思われます。

・ 僧侶による「スープ・チャター」の読経。
 「スープ」というのは、「吸い取る」という意味、「チャター」というのは、「運気」とか「幸運」とかいう意味です。
 坊さんたちの読経により、「川の精霊」からの「運気」が、「聖糸」を伝わってくるのだそうです。
 老若男女が、坊さんの手からつながった「聖糸」のはしを手に持って、「運気」を吸収し、「幸運」や「長寿」にあやかろうと真剣そのものです。
 「新築祝い」や「開店祝い」などでも、坊さんを招いて、「スープ・チャター」の祭事を行うようですが、そのほか「林のスープ・チャター」といって、野山の木々の供養などもあるようです。
 「スープ・チャター」の祀りの歴史は古く、ランナー・タイの先住者「モン族」から伝わったものだそうです。

・ 「メカム川の精霊供養」。
 「精霊供養」は、仏教の祀りではないので、坊さんは立ち会いません。
 お供えの「花飾り」など用意して、主賓が簡単な挨拶とお祈りをします。
 そのあと、川端に設けられた舞台の上で、伝統芸能が、奉納されます。
 ランナー衣装の若者による伝統舞踊だったり、民族楽器の合奏団による音曲だったり、年によってかわるようです。
 伝統芸能の奉納が終わると、来賓者たちによって、用意された数万尾の「稚魚」が放流されます。
 さらに、そのあと、最近の「環境保護」の趣旨からでしょうか、近くの山に「記念植樹」がおこなわれます。

・ その他、数々の展示・余興。
   ・ 河川環境局の広報展示
   ・ メカム小学校、「環境クラブ」の展示
   ・ 「のど自慢大会」
   ・ 「ペイトン大会」
   ・ 「ソー一座」の公演
   ・ 「有料ディスコ」
   ・ 子供たちの民族芸能披露など
 変わったところでは、「公然賭博」の「ビンゴ」のテントがあったことです。
 普段は、「賭博禁止法」で規制されているものですが、公然と「開帳」されているところなど、いかにもタイらしいことだと思います。
 賭博行為に関して、例外規定があるとは思われず、法律が一人歩きすることなく、立法の趣旨が生かされ、杓子定規に取り締まらないところなど、すばらしいことだと思います。
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 「祀り」の会場は、我が家の養魚池から、200m足らずのところ。

 司会者の拡声器の声もだいぶ高まってきたのを感じて、ぶらぶら出掛けたところ、会場のハズレでは、もう、「ペイトン」競技が始まっていた。

 向こう側の貯水タンクは、洗面所用のもの。
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飲み物、食べ物、玩具など、さまざまな屋台店が出ていた。
 この道の先、2kmほどのところに我が家がある。

 思い起こせば、20年ほど前、まだ道路も狭く、このあたりは、昼でもほとんど人通りのないさびしいところで、我が家に「脅迫状」が舞い込み、現金の受け渡し場所として、「犯人」が指定した場所も、この付近だった。今となっては懐かしい想い出である。
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「勧進舞踊」を舞う、お嬢さん方も、本番前の腹ごしらえのようす。
 今朝は、早くからお化粧や着付けで忙しく、朝食はまだだったのかもしれない。
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 すぐ近くに「定住」してしまった、「ムスー(ラフ族)」の家族も、祀りを楽しみにやってきた。

 これが、「ラフ」の最近の外出着姿で、少数民族の「観光祭り」などでは見ることのできる「ラフ族」独特の民族衣装姿には、お面にかかることはなくなってしまった。
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 「のど自慢大会」の参加受付のお嬢さんたち。
 あちこちで目に付く「黄色」のシャツ姿だが、国王、ご生誕80周年の今年は、ご即位60周年の去年に引き続いて、黄色、黄色ということになる。
 「黄色」は、月曜日の色で、国王は、月曜日のお生まれだそうである。
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 これが、メイン・ステージで、「のど自慢コンクール」の舞台。

 時代ですかね、背景のビニール製の幕は、最新の技術で印刷された1枚もので、いつも見慣れている知り合いの顔などもあり、こんな田舎にまで普及してきた「ハイテク」には感心させられる。
 はしたない話だが、日本だったら、これだけで、数十万円はとられそうだ。
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 10年ほど前までは、このような恰幅のいい女性にはお目にかかれなかった。タイ族というのは、遺伝的に生まれつき肥満にはならない民族かもしれないなどと思ったこともあったが、食生活が豊かになり、生活も楽になると、やはり、恰幅はよくなるようだ。

 「ダイエット」とか、「エアロビック・ダンス」など、百姓の女には似つかわしくないことだとおもうが、流行し始めている。
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 「スープ・チャタ」の儀式会場遠景

 できるだけ多くの信者に「運気」が伝わるようにとのことで、今回はテント張り。
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 テントの下に入りきれなかった人たちは、読経の間、合掌。

 「スープ・チャータ」の会場が、お上によって認定され、権威つけられることになったのか、境界杭が用意されている。
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 11人の坊さんたちによる「スープ・チャター」の読経。

メカム町内の住職ばかりである。
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 天井からぶら下がった糸が、「運気」の伝線。

 読経の間、一人一人の手にしっかりと握り締められている。
 「スープ・チャター」は、もともと仏教の行事だったのかどうかは怪しいところだが、やはり、「小乗仏教」とはいえ、「ご利益」がなくては・・・。
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 高齢者の多くは、これだけが目的で集まってきた人たちも多い。長生きもしたいし、現在の生活は、あまり幸せではないのでしょうかね。

 このような「迷信」を本気で信じるのは、いずこも同じだが、女性の方が圧倒的に多い。
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 「川」にも、精霊のようなものがあって、敬意を評さなければいけないということは、理解できないことはないが、このようなかたちで、「ご利益」を得ようなどという、虫のいいことを考えるのはどうかと思う。

 「ご利益」を得ようと、合掌することが、自省する心につながるのであれば、それはそれで結構なことなのだろうが・・・。「天は、自ら助くるものを助く」というではないか。
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 「寄進」受付のお嬢さん方。

 町内の各家庭に、宛名が書かれた、「祀り」の案内状が届けられたが、その封筒がそのまま、寄進袋に使用される。
 寄進額もさまざまだが、多額だからといって、記帳されるなどということはない。
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 今年は、「河川環境局」のPR展示があった。
 以前から、この場所のすぐ近くに「雨量計」が設置されていることは知っていたが、あまり熱心に観測している風ではなかったので、今回の展示の中にあった「メカム川上流」の「ヒンテーク」とこの付近の、過去11年間の月別雨量統計は参考になった。

 ちなみに、チャムトーンあたりの11年間の年間平均雨量は、1800mm。北タイ南部地方の、約2倍の降雨量。
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 今年から、余興のひとつに「ペイトン競技」が加わった。
 日本では「ペタンク」と呼ばれている、西欧伝来の球技で、老若男女を問わず、誰でも参加できるスポーツ。国王ご生母・故シーナカリン殿下が、10年あまり前に、チェンライに招来したものである。
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 3人一組のチーム・プレイで競技されるのが普通である。
 参加チームも多く、朝から夕方ちかくまで、延々とトーナメント戦が繰り返されていた。
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 詳しい競技方法やルールなどについては、

Googleなどで検索して、「ペタンク協会」のページなどを。
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 ランナー・タイの伝統舞踊、「爪踊り」。

 もともとは、「タイ・ヤイ(シャン族)」の伝統芸能で、今回も近くのタイ・ヤイ部落・「シーパン・ライ」のお嬢さん方が踊っていた。
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 指先には、長さ10cmあまりの真ちゅう製のそりかえった「爪」がはめられている。

 いわれなどあるのだろうが、詳しいことは知らない。
 タイの代表的な民族舞踊として、バンコクなどでも、観光客用に披露されていることがある。
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 「ギィオウ(タイ・ヤイを地元ではこう呼んでいる。)」は、この衣装のような色の組み合わせを好むようである。

 幼児の出家儀式(ポイ・サン・ルアン)などでも、出家する前の子供が、こんな色合いの衣服を着せられている。

 衣服の色とは関係ないが、「タイ・ヤイ」は、「コン・ムアン」よりも文化的には、進んでいるようで、北タイの祭りの多くが「タイ・ヤイ」由来のものが多いようである。
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集まった寄進を、役員の人たちが数えていた。

 総額38,192バーツだったと、のど自慢大会の司会者が報告していた。一人平均20バーツ(100円弱)といったところか。
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 今年、「川の女神」に奉納された古典音楽の楽団。
 背景の川が、「メカム川」。
 この楽器構成は、もともと宮廷音楽用で、バンコク王朝あたりから北タイに伝わったもののようだ。当地では、普段はめったにお目にかかれないアンサンブルである。
 ランナー・タイ由来の「ソー」や「スング」などは、含まれていない。演奏される曲も、ランナー・タイの音楽ではないのかもしれないが、聴きそびれたのでわからない。
 タイの楽器については、拙稿 『 タイの楽器 』 を。
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 これが、「スープ・チャター」用の「マジカル・ピラミッド」。
 「運気」を吸い取るためには、ほんらい、この3本の柱の下に入らなければならないものだが、多数の参加者を想定して、テントが代用に使われた。
 「スープ・チャター」も、やがては、ミニチュア・ピラミッドで代用される時代が来るのかもしれない。
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 余興の「イコー・ディスコ」。
 今年から、娘のケイたちの次の世代に引き継がれた。
 看板もちは、従兄弟・マンの末娘。
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 「アカ族」との親交の深い「メカム町」には、あちこちに、「イコー・ダンス」のグループがあるが、山岳民族「アカ」の女性たちの集団ダンスをヒントにしたダンス。ディスコ風のドラムの伴奏で、跳んだりはねたり、若者らしい活発な踊りである。
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 今年から、初めて男の子もメンバーに入った。
 多分、将来は、「性同一障害者(カトゥイ)」ということになりそう。
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 長い乾期のあとで、子供たちが、跳びまわるごとに、赤土の「ほこり」がもうもうと上がる。
 例年のことではあるが、この祭りの翌日には、まとまった雨が降った。偶然とはいえ、「雨乞い」の祀りの霊験はあらたかである。
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 われわれの子供時代には、”女のな〜かに、男がひ〜とり”とひやかされるのが普通だったが、陰ではともかく、表立ってとやかく言うものはいない。女の子たちからも大歓迎のようである。
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 わが村の人気教頭モンコン先生も、教え子たちの活躍する姿を、目を細めてカメラに収めていた。
 教頭先生、なんとかいう難しい試験にやっとパスできて、今度転任するときには、悲願かなって校長になれるのだそうだが、ときすでに遅く、何年もしないうちに定年を迎えることになる。
 ちなみに、現在の給料、4万バーツ強(約15万円)。20年前の20倍近い月給。
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 「プッキー」と「キック」も、「イコー・ダンス」の鑑賞。
中央の赤シャツが「プッキー」、その右が「キック」。

 彼女たちにも、メンバーへの勧誘があったが、村内の小学校に通っている子供たちばかりで、親しくなれないのか、参加しなかった。でも、この晴れやかな姿にはあこがれているようだった。
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 次のだしものは、ランナー民族古典舞踊(?)
 客接待の雰囲気にあふれたものだが、詳しいいわれなどは不明。
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 「鯛や平目の舞踊り」?
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 少しだけですが、わが国の「雅楽」の舞を連想させるようなところが・・・。
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 さながら、「竜宮城」の歓迎パーティー。
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 かつて、賓客を迎えたときには、うら若い乙女たちが、人身御供に提供された歴史がしのばれる。
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 日本には、「白拍子」などという「職業」もあったそうな。
 華やかさの陰に、悲しさの見え隠れする踊りだった。
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 今年初めて結成された、わがノンギエン村の「サバッチャイ」。
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 「曲打ち」や、打ち手の「ダンス」など、まだ難しい技は披露できないが、2,3年もすれば、「サバッチャイ・コンクール」に出場できるほどに上達するのではないかと、楽しみにしている。
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 無料の「炊き出し」に殺到。

 2〜300食分しか用意されていなかったようで、奪い合いだった。
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 伝統芸能「ソー一座」。

 世相風刺や、下ネタなどもあって、ちょっとばかりエロチックな男女の掛け合い漫才なのだが、最近は人気も下火のようで、ほんのわずかなお年寄りだけが楽しんでいた。
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 移動式の簡易留置所も登場。

 この種の祭りでは、過去にも刃傷沙汰が起きており、チェンライは、いまだに「戒厳令下」にあることでもあり、出動とあいなったものと思われる。
 幸いにも、今回はこの中に収容されたものがいなかったようだが、「脅し」がきいたのかもしれない。

 前の3人は、「モホーム」と呼ばれる、農民用の礼服を着用している。

 背後の竹林の向こう側に、我が家の養魚場があります。





「のど自慢大会」で惜しくも優勝を逃した我が家のホープ・義妹「ノンカン」。
小柄だが、「深田恭子」似の目鼻立ちのはっきりした「アカ族」とのハーフ。
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(  撮影 : 2007年4月9日、 記事公開 : 2007年4月14日  )