竹(バンブー)の花


 北タイの竹

 は、「イネ」の仲間の植物であるが、イネよりも起源は古いらしい。
竹類に属する植物は、世界中に数百種類あるそうだが、もともとの原産は、東南アジアの熱帯、亜熱帯地方だそうだ。

 チェンライに住みはじめたころ、あちこちの屋敷森やあたりの山々に、竹が多いのでなんとなくほっとした思いがしたものである。「暑さ」の象徴のような「椰子の木」や「バナナの木」には、じつのところ、少々、げんなりしていたところで、日本の暖地の風景に近い竹林は、ちょっとした救いだった。

 ところが、北タイの竹は、よく見ると、日本の竹とは、まったく異なることに気がついた。一本ずつ立っているのではなく、すべて「株立ち」である。地下茎が短いのだそうだ。というより、ほとんど地下茎がないと言ったほうが正確かもしれない。
 狭い株元から出た「たけのこ」は、成長すると先端は、しなやかに垂れ下がり、「韓国」の民族舞踏、胸に鼓(つづみ)をかかえて踊る踊り子の頭の飾りを連想させる。

 この種の竹は、日本の竹など地下茎の長く伸びる竹と区別して一般に「バンブー」というのだそうだ。「バンブー」は、「たけのこ」の食用、竹細工はもちろんのこと、さまざまな建築材料、「わら縄」の代わりの結束材、 はたまた、「カオラム」という竹筒飯の容器に使われるなど、さまざまな道具に加工されて使用され、日常生活に欠かせない植物である。「ランナー・タイ」は「竹の文化圏」ということができるかもしれない。
バンブー1  

 竹 - 不思議な植物 -

 このあたりでは、は、「株分け」または「挿し木」で繁殖させる。野山に生えている竹の中には、自然繁殖のものもあるらしいが、人工的に植えられたものがほとんどのようだ。中国で陰暦の5月13日を「竹酔の日」というのだそうだ。このころ、竹を植えつけると枯れることはまずないらしい。北タイでは、雨期に入って間なしのこのころ、ほんのわずかに根らしいものがついた株を植えつけたり、2,3年生の竹の根元に近い部分を挿し木にすると、1ヶ月もしないうちに新芽が出てきて、活着する。手間のかからない丈夫な植物である。これで水遣りもしないで、この年の乾期をのり切ることができる。

 竹は、毎年花を咲かせるなんてことはない。種子から発芽して、数十年後に、花を咲かせ実らせて、株ごと枯れてしまう。(まれには、株の一部が、しぶとく生き延びるものもあるようではある)
 滅多に竹の花を見ることができないためと、花の咲いたあと、いっせいに枯れてしまうことから、古来、竹の花が咲くのは「不吉」な事が起きる前兆などと言い伝えられて来た。竹のほかにも、長年かけてやっと花を咲かせて、その後枯れてしまう植物は、さまざまあるようだが、竹が不思議なのは、株分けや挿し木で繁殖させたものも、親の竹の枯れる時期とまったく同じ時期に花を咲かせて枯れてしまうことである。竹はどこで、その時期を記憶しているのだろうか。親木から何十キロも離れた、環境も異なる場所に植えられたとしても、1年もたがわずに、同じ時期に枯れるのである。
 我が家の竹の一部も、一昨年、花を咲かせて枯れてしまった。同じように花を咲かせて枯れている竹を見ると、もしかして、我が家の竹の兄弟分ではないかと、何とはなしに、いじらしく思えてくる事もある。
バンブー2

 花が咲いて枯れた竹

バンブー3

 竹の花



竹の花のその後


 やがて、「竹の花」は実をつけ、2年後には発芽して、次の世代の、新しい「竹」に生まれ変わります。そして、何事もなければ、数十年、あるいは百年以上生き続けることができるのです。
竹のこばえ