北タイのイネの品種

 タイのイネの品種の開発や管理は、タイ農業省「 タイ稲作研究所: Rice Research Institute ( สถาบันวิจัยข้าว ) 」で行っている。
「農事試験場」のような組織も、地域ごとにあり、それぞれの試験場では、農民の協力の下、試験田での試作などもされているようである。

 2006年現在、約80種の認定された品種があるが、そのうち、北タイ地方で比較的多く作付けされている品種を選んで一覧表にした。

 収量の多い品種は、ピンクのバックにしてあるが、病虫害に対する耐性や、食味などから、必ずしも収量だけが品種採用の目安ではないのは、日本と同じである。
ブランド米の「ホームマリ(カオドークマリ)」などという品種は、多収量の品種と比較して、2分の1程度の収穫しか見込めないが、味がいいので高い価格で出荷出来るため、作付けされることもあるようだ。

 陸稲をのぞくと、すべて長粒種(インディカ種)である。陸稲には、ジャバニカ種という短粒種に近い品種も、わずかな面積作付けされているが、山岳民族の自家消費用がほとんどのようである。

 「反収」は、「1ライ(1.6反)」の平均収量を、反当りに換算したものである。
 日本の米の収量と比較すると、おおむね、2分の1以下である。

 当地で、「コシヒカリ」や「ササニシキ」、「ヒトメボレ」などという日本の米も栽培されているが、日照時間や土壌の違いのほか、稲作技術や管理の違いから、タイ米と比べると、単位面積あたりの収量はかなり少ないようである。

 一覧表内の品種名をクリックすると、各品種の写真など詳細を見ることが出来る。ただし、すべてタイ語表記。
 本資料のタイ語の原典は、以下のところにある。
             「タイ稲作研究所( สถาบันวิจัยข้าว )」



北タイでの主な品種一覧表

品種名
種類
生育日数
反収
来歴など
灌漑水田(乾期作向き)
コー・コー 7号(RD7)
(กข 7)
うるち 125 (早生) 400 在来種と
フィリピン・インドネシア種との交配
コー・コー 23号(RD23)
(กข 23)
うるち 125 (早生) 500 IR32とRD1,RDの交配
コー・コー 10号(RD10)
(กข 10)
もち 130 (早生) 400 RD1を放射線処理によって作出
プレー 1
(แพร่ 1)
もち 130 (早生) 430 IR 2061系種と RD4の交配
サンパートーン 1
(สันป่าตอง 1)
もち 130 (早生) 390 BKNLR75001系と RD2の交配
天水田(雨期作向き)
カオドークマリ 105
(ข้าวขาวดอกมะลิ 105)
うるち 165 230 半世紀ほど前
中部チャチュンサーオ県内で選抜
105番目に見つかった
ピサヌローク 1
(พิษณุโลก 1)
うるち 175 360 カオドークマリとIR58などとの交配種
ピサヌローク 3
(พิษณุโลก 3)
うるち 190 (晩生) 380 RD27 と LA29の交配
ピサヌローク 60−1
(พิษณุโลก 60-1)
うるち 195 (晩生) 340 カオドークマリとIR26の交配種
コー・コー 6(RD6)
(กข 6)
もち 165 420 カオドークマリに放射線処理したもの
突然変異により「うるち」が「もち」に
雨期作のモチ米としての人気は高い
陸稲(雨期作用)
ナム・ルー
(น้ำรู)
うるち 130 (早生) 150 チェンマイ県チェンダオのリス族が
作付けしていたものを認定
高地向、中粒種
チャオ・ホー
(เจ้าฮ่อ)
うるち 140 (早生) 130 チェンライ県のリス族が
作付けしていたものを認定。高地向
シウ・メーチャン
(ซิวแม่จัน)
もち 130 (早生) 280 チェンライ県で作付けされていた陸稲
低地でも可
R 258
(อาร์ 258)
もち 120 (早生) 150 「3ヶ月早生」という、早生モチから選抜
耐乾性大で、陸稲に転用



品種の良し悪しの判断基準


コー・コー6 ( RD6 ) の例

(長所)
 ・ 「収量」・「耐乾性」、ともに「サンパトーン種(もち)」にまさる。
 ・ 蒸かした時の食味はよく、香りも良い。
 ・ イネは丈夫で、倒れにくい。(草丈:150cmあまり)
 ・ 施肥効果が良い。
 ・ 病中害に比較的強い。特に「斑点病」に耐性がある。
 ・ 草丈が高いので刈り取りやすく、落粒も少ない。
 ・ 精米性能も良い。

(短所)
 ・ 「うるち米」から作出された品種であるため、
   作付けごとに「先祖かえり」があり、「うるち米」が混ざるようになる。
 ・ 「葉枯れ病」には強くない。
 ・ 「ウンカ」や「イネバエ」には、強くない。