国の木、県の木、県の花

 タイにも「国の木」、「県の木」、「県の花」があります。
 日本人や中国人などと比べて、国とか故郷とかをあまり意識しないタイの人たちとっては、どうでもいいことなのでしょうが、 一般には、ほとんど知られていないようです。

 「県の花」、「県の木」というのは、国民の「自然を愛する心」をはぐくむためにと、国王ご夫妻の発案できめられたのだそうです。

県の木」は、
御下賜の県の木ไม้พระราชทานประจำจังหวัด )」というのが正式の呼び名だそうです。70あまりの都県に、それぞれ似つかわしい花木を選定するのは容易ではなかったことと思われます。
 「ペチャブン県」の「マカーム(タマリンド)」のように、その土地の特産くだもののような場合もあれば、チェンライ県の「カサロンカム」のように、世界的にもなじみの薄い珍しい木もあったり、さまざまです。
「県の木」には、「吉祥をもたらす木ไม้สิริมงคล )」として言い伝えられている花木が多く選ばれているようです。

 「県の木」、「県の花」が制定されて、ほぼ15年が経過し、やっとあちこちで、立派な花を見ることが出来るようになりました。




国の木

カンラパプルック ( กัลปพฤกษ์ )

ジャケツイバラ科 ( Caesalphiniaceae )
Cassia bakeriana  Craib



インドネシア原産。
チャイヤプルック ( ชัยพฤกษ์ )(勝利をもたらす木)」 とか、
ラーチャプルック ( ราชพฤกษ์ ) (国の木)」 と呼ばれることもあるが、
この木のほかにも、同じ呼び名が使われているので紛らわしい。

 薄いピンクの花が満開になると、遠めには日本の桜に似ているところから「タイ桜」と呼ばれることもあるようだが、日本の桜のようにヒラヒラと散ることはない。”静こころなく、花の散るらむ”というわけにはいかない。

 同種の木は、「欲しい物が手にがいる木 (如意樹)」として、『 仏教説話 』 にも登場し、遠くスコータイ朝のころから植えられていたらしい。
タイ桜
 ちなみに、タイの「国花」は、通称「ゴールデンシャワー」と呼ばれる「チャイヤプルック」。 三大名花の一つだそうです。 暑期に入るとまもないころ、レモンイエローの藤のような花が満開になります。いやみのないさわやかな黄色が美しい花です。 上記の「ラーチャプルック」と混同されることのある木です。 家の前庭に植えると、何事にも「負ける」ことのない「吉祥の木」だそうです。
写真は、写真集 わが家の草花・花木 を。

 さらに、「国の動物」は、「」、 「国の鳥」は、「Siamese Fireback」というキジの一種です。




チェンライ県の「県の木

カーサロン・カム ( กาซะลองตำ )

ノウゼンカツラ科 ( Bignoniaceae )
Radermachera ignea, (Kurz) Steenis.

 タイ新年の「 ソンクラーン祭 」を間近にひかえた「暑期」の初めころ、ほのかにジャスミンの香りをただよわせる花が満開になる。
 太い幹から直接花序が出てきて、花のつき方は、ちょっと異様であるが、こんな木はほかにもあるので特に珍しいということはない。

 チェンライ県の「県の木」に指定されているが、最近になってよそから入ってきた花木ではないかと考えられる。原産地は、東南アジア南部(多分、島嶼部)。18世紀にオランダで出版された「ジャバ・スマトラ植物誌」に載っているらしい。属名は著者の名に由来するものだそうである。

 あまりなじみのない木ということもあってか、チェンライ県内では、「 火焔木Spathodea campanulata )」などを、この木とまちがえて植樹していたこともあり、市民の多くが、「 火焔木 」を「 カサロンカム 」と勘違いしていたようである。
 ともに、「ノウゼンカツラ科(Bignoniaceae)」の木であるために、苗木を調達する際にとりちがえたのかもしれない。




 「花ことば」は、清楚、忍耐、進歩、平和。
手間のかからない、乾燥にも強い丈夫な木である。




チェンライ県の「県の花

ポン・セート ( พวงแสด )

ノウゼンカツラ科 ( Bignoniaceae )
Pyrostegia venusta, MIERS.

和名は「カエンカヅラ」というのだそうだ。
日本の花やで鉢植えが売られているかもしれない。

 ブラジル原産常緑のつる性の花木。
 暑期の初めころ、家の周りの塀や壁に満開になっているのを見かけることがある。

 「県の木」の「カサロンカム」とは、同じ科に属し兄弟分にあたる。花の形や色も似ていて、咲く時期も同じころ、好一対といった感じの花である。

 個人的には、橙色の花というのは、あまり好みではなかったが、近づいてよく見ると、複雑なグラデーションがあって、なかなか可愛い花である。

 少しつやのある緑色とのコンビネーションは、なかなか品がいい。遠目には、少々暑苦しい花ではあるが・・・。




主な県の「県の木」

県名 和名 タイ名 学名(科名)
クルンテープ(バンコック) ベンジャミンゴム ไทรย้อยใบแหลม Ficus benjamina Linn (Moraceae)
アユタヤ 不詳 หมัน Cordia cochinchinensis Gagne.(Boraginaceae)
ナコンラーチャシマ 不詳 สาธร Millettia leucantha Kurz (Papuluonaceae)
シーサケット 不詳 ลำดวน Melodorum fruticosum Lour. (Annonaceae)
ブリラム モモイロナンバンサイカチ กาฬพฤกษ์ Cassia grandis Linn. (Caesalpiniaceae)
プーケット インドカリン ประดู่บ้าน Pterocarpus indicus Willd. (Papilionaceae)
チェンマイ ハナモツヤクノキ ทองกวาว Butea frondosa Roxb. (Papilionaceae)
ランプーン ネムの木の一種 จามจุรี Samanea saman Merr. (Mimosaceae)
ランパーン 不詳 ขะจาว Holoptelea integrifolia Planch (Ulmaceae)
パヤオ 不詳 สรภี Ochrocarpus siamensis And. (Guttiferae)
ウッタラディット チーク สัก Tectona grandis Linn. (Verbenaceae)

「タイ文字」のフォントが、インストールされていないと、タイ文字部分が、文字化けするかもしれません。
悪しからず、お許しのほどを! 「WINDOWS XP」 でしたら、多分、OK です。