カレンダー(暦) - タイ暦、ランナー暦   



 タイの暦のような、太陽暦、太陰暦のミックスした暦法を「太陰太陽暦」というのだそうです。
日本の暦と比べて、非常に複雑で、十分には理解できないのですが、タイの田舎ではいまでも「旧暦」が使われることが多く、調べた結果など以下にご紹介する次第です。

 年号の数え方を、紀年法というのだそうですが、
タイで公式に使われている紀年法は「仏暦(プッタ・サカラート)」といわれるものです。
お釈迦さまがなくなった年を紀元0年として計算したもので、西暦に543年を加えた年になります。西暦2005年は、仏暦では、2548年になります。最近では、西暦が使われることも多くなりましたが、公式文書などでは、仏暦を使うように定められております。
 大昔から、仏暦を使っていたわけではなく、100年あまり前、「ランナー・タイ」が併合された頃に、法律で定められたそうです。

 仏暦以前にも、いくつかの紀年法がありました。仏暦が採用される直前には「ラタナコシン暦(バンコク王朝暦)」がありました。さらに、古い歴史書などには「大暦(マハッサカラート)」や「小暦(チュンラ・サカラート)」の年号が出てきますが、「大暦」は、西暦78年、「小暦」は、西暦638年がそれぞれ0年に当たります。「アユタヤ時代」の公用紀年だった「小暦」は、「ミャンマー」の公用紀年をそのまま使っていたもののようです。「ミャンマー」の歴史書は、小暦で記載されているものが多いようです。
そのほか、古い法律文書などに登場する「チュラマーニ暦」というのがあり、西暦188年が、0年にあたります。「大暦」、「チュラマニ暦」は、ともに、インド由来の紀年法で、「上座部仏教」とともに伝来したものだそうです。

 タイの年中行事は、今でも、太陰暦によって、行われることが多く、とりわけ、北タイの田舎では、「結婚式」、や「起工式」、「竣工式」など、「太陰暦こよみ」が重要な役割を果たしているようです。これらの「吉事」は、太陰暦の偶数月に行うのが良いとされています。

 1年は普通の年は12ヶ月ですが、3年ごとに「閏月」のある年があり、その年は、9月が2回あって、1年が13ヶ月になります。

 1年の始まりを「ピー・マイ(新年)」といいますが、「ランナー暦」では、太陰暦の1月ではなく、7月1日が、新年の始まりです。バンコクなどの中部タイの太陰暦では、5月に新年を迎えます。西暦になおすと4月の中旬になります。インドの暦法が伝えられたものだそうですが、太陽が「白羊宮」に入る日を「大ソンクラーン」いい、その日を新年の始まりとしたためだそうです。この方式だと、1年の始まりは、標準的に使われている太陽暦では、一定に日に定まらないため、現在では、太陽暦の4月13日を、便宜的に「大ソンクラーン」と定め、その日を新年の始まりとして、さまざまな新年の行事がとり行われる様になりました。北タイの元旦は、「大ソンクラーン」の翌々日の「ワン・パヤワーン」ということになっているようです。
 それにしても、1年の始まりが、1月ではないというのは、なんとなくしまりがないような気がして、なじめないものです。

 太陽暦の月に対する呼び名はありますが、太陰暦では、1,2,3・・・月とかぞえて、月の呼び名はありません。月の呼び名は、インド伝来のもので、月の呼び方を知らない人の方が多いくらいです。「外国人」である小生に、その呼び名の教えを請う人さえいるくらいです。
ちなみに、北タイでは、1月を「ドゥアン・アイ」、2月を「ドゥアン・ジー」といいますが、この「ジー」というのは、多分、中国後の「」に通じるものでないかと思います。

 太陰暦では、それぞれの月を月の満ち欠けによって、「上り」と「下り」に分けて、月が満ちていく過程を「クン(白分)」、欠けていく過程を「レム(黒分)」といいます。「クン」が15日、「レム」が15日(奇数月は小の月で14日)です。したがって、「ランナー暦」には、16日以降の日というのはありません。「白分の5日」のことを「クン5(ハー)カム」、「黒分の10日」のことを「レム10(シップ)カム」といった具合に呼びます。

 タイの暦にも、日本の古い暦と同じような、十干十二支に相当するものや、「大安」、「仏滅」のような決まりがあって、各種の行事が、陰暦のカレンダーに従ってとり行われることが多いようです。
また、月の満ち欠けの、「満月」、「上弦」、「下弦」にあたる日、および「新月またはその前日」、は、「仏日(ワン・プラまたはワン・シン)」といって、お寺参りをする日ときめられています。この日には、仏教信者は、さまざまな「戒」を守らなければならない日と決められています。
たとえば、
   ・「殺すなかれ」     ・・・市場の肉屋、魚屋は閉店、「洗髪」禁止。
   ・「姦淫するなかれ」  ・・・男女の交わりは禁止。
     などなど

 「仏日」以外にも、日本の古い暦と同じように、さまざまな事柄に、日によって吉凶が定められていますが、現在では、あまり意識されてはいないようです。
 たとえば、「普請」、「引越し」、「冠婚葬祭」、「洗髪」、「爪切り」、などなど

                                              2005年8月26日

 (追記)
 タイの暦は、非常に複雑なため、計算間違いなども、たまにはあるようです。
1ヶ月ほど前、「The Nation」誌のWEBページに、以下のような記事がありました。
 タイ王室も利用している『100年星座暦(こよみ) 』の計算ミスにより、今年の仏教の3大祝日が、1日遅れで実施されることになってしまった。・・・10月18日の「オ ークパサー(安居明け)」は、正しくは10月17日、11月17日になっている「ローイ・グラトーン(灯篭流し祭)」は、本来11月16日が月齢上正しい。これらの行事は、前倒しして、実施されるべきである・・・・。』と。

 (参考)
2006年2月6日付けの「MSN毎日インタラクティブ」から旧暦に関する記事を全文転載しました。
 リンクを貼るだけでもいいのですが、そのうちにリンクできなくなる可能性を考慮して、コピーしました。

はてなの玉手箱:旧暦で暮らしてみたら
 きのう5日は「立春」だった。そう、暦の上ではもう春。そんな自然や季節の移ろいを感じ、スローな生活を送ろうという「旧暦暮らし」が静かなブームを呼んでいるらしい。どんな暮らし方なのだろう。【濱田元子】

 ◆自然を意識

 「旧暦暮らし」の実践例を知ろうと、比叡山のふもとに広がる京都市郊外の会社員、池田邦彦さん(41)の畑を訪ねた。ホウレンソウや水菜などが見事に育っている。

 約8年前から趣味で野菜を作っている池田さんは「例えば『3月初め』のような、新暦による指示通りに種をまいたり苗を植えたりしても、出来が安定しない。何かズレを感じていた」という。ある時、「コブシの花が咲いたら、ジャガイモを植え付けるといい」と聞いて、ぴんと来た。

 畑周辺にはコブシがなかったので、シキミの花が咲いたのに合わせてジャガイモを植え付けてみたところ、収量がぐんと増えた。「野菜や草木、昆虫など、生き物の出現には順序があり、密接に関係し合っているんだなと実感した」と話す。

 ◆月を基本に

 日本で現在の新暦(太陽暦、グレゴリウス暦)が取り入れられたのは1873(明治6)年1月1日。旧暦は、それ以前に使われていた太陰太陽暦を指す。月の満ち欠け(29・5日)を基に、新月を月の始まりとし、1年の長さは地球の公転周期(365・2日)で決める。

 また、季節の目安として、太陽の運行を基に1年を24に分けたのが、立春や啓蟄(けいちつ)など「二十四節気」。さらに約5日ごとに分け、「東風解凍(東風が氷を解かし始める)」「魚上氷(割れた氷の間から魚が飛び出る)」など、気象や動植物の変化を表したのが「七十二候」だ。

 池田さんは、自分のホームページ「畑帳」で、「黒アリが動き出す」「フキノトウが出る」など自分で見つけた変化をオリジナルの「七十二候」として紹介している。

 ◆年賀状も

 「続々と、旧暦と暮らす」(ビジネス社)の編著者、相良高子さん(60)と小坂京子さん(48)は、野菜はなるべく旬のものしか食べず、年賀状も旧暦に合わせて出すという徹底ぶり。

 「新月に種をまくと虫がつかない」と言い習わされているが、小坂さんは自家菜園に白菜の種をまくときに試し、実際に虫がつかなかった経験がある。相良さんは「生き物が太陽と月の運行によって生かされていることを知ってほしい」と旧暦暮らしを勧める。

 節気に合わせ季節の花や果実を盛る室礼(しつらい)の研究家、山本三千子さんも「室礼は人間が自然の循環の中で生かされていることを思い出し、自然につながること」と説く。

 一方、「二十四節気も太陽がベース。季節の変化を表すのに優れているのは新暦の方。旧暦はイメージが先行しているのでは」と海上保安庁で6年、暦算を担当した鈴木充弘さん(43)は反論する。

 ◆固有の文化

 多くの国では太陽暦が使われているが、太陰暦のイスラム暦、太陰太陽暦のユダヤ暦など固有の暦も健在だ。国立民族学博物館(大阪府吹田市)の中牧弘允教授は「暦は生活文化を知る手がかり。近代日本は暦をはじめ欧米一辺倒の生活様式に移行したが、旧暦を一つのきっかけとして一昔前の生活様式を見直すことが、季節感なく暮らす都会の人たちの癒やしにつながるのでは」と話す。

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 ◆06年の主な新旧暦

 旧暦     新暦    行事

 1月 1日  1月29日 元日

 1月 7日  2月 4日 立春

 3月 3日  3月31日 ひな祭り

 5月26日  6月21日 夏至

 8月15日 10月 6日 十五夜

11月 3日 12月22日 冬至

毎日新聞 2006年2月5日 東京朝刊